『〈標本〉の発見: 科博コレクションから』
National Museum of Nature and Science_BOOK_1114.pdf
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本書は、2023年11月24日に発売された同タイトルの書籍(ISBN:978-4-336-07563-5、発行元:国書刊行会)のPDF版です。
企画編集:畠山泰英(大人の科学バー/キウイラボ)
【内容紹介】
日本随一のコレクション数を誇る国立科学博物館――
美しい標本、それぞれのストーリー
科博の研究者14名がこだわり選んだ、
レッドリスト絶滅種、絶滅危惧種を中心に150種超。
四季折々の自然豊かな環境に、生物多様性を誇る日本列島。
トキ、ニホンオオカミ、ニホンカワウソ、クニマス、ホソバノキミズ、冬虫夏草、タガメ……
美しいカラー図版に、それぞれの種にまつわるエピソードを添えて、
絶滅の物語、復活の物語、あるいは科学の最前線を知る。
種の保全につながる標本を「再発見」し、未来につなげる、
日本列島の生物多様性をさぐるヴィジュアルブック。
国立科学博物館の企画展「発見! 日本の生物多様性」(2021年)を再編集して成書化。
※恐竜を含む古生物、岩石・鉱物、理工学機器類の標本は扱っていません。
【はじめに】
国立科学博物館(以下「科博」)は、ヒトを除く現生生物だけで約450万点の標本(化石、岩石・鉱物、人類、理工学の標本・資料を加えると約500万点)と生きている植物(以下「リビングコレクション」)を保有しています。すべての標本には、採集から研究への活用に至るまで豊富なストーリーがともなっているはずですが、点数が膨大なために掘り下げて紹介できる機会はなかなかめぐってきません。本書では「日本の生物多様性保全」を切り口に、それを考えていくうえで重要な役割を担う標本を科博のコレクションから厳選しました。一方で、科博のコレクションは日本の生物多様性の時空間的分布を網羅するにはまだ十分ではなく、多くの不足があります。そのため、必要不可欠な標本は、他機関所蔵のものを紹介しています。過去に採集されたコレクションの中には、その場所から現在は姿を消してしまい、新たに収集するのは困難なものが少なくありません。国内各地の自然史系博物館と互いに補い合いながらコレクションを構築していくことも大変重要と考えられます。
本書は6章構成となっています、1章(ⅰ)ではヒトが野生生物に影響を与えた端的な例として、日本において絶滅判定を受けた生物を紹介します。多くの絶滅種が極めて限られた点数の標本しか残されておらず、紹介する標本はどれも大変貴重なものです。2章(ⅱ)では、いったん絶滅宣言が出されたものの野生個体が再発見された種を紹介します。3章(ⅲ)では、絶滅寸前種(絶滅危惧種の中でも、特に絶滅のおそれの高いもの)をとりまく状況を生物群ごとに見ていきます。4章(ⅳ)では、ヒトの営みに翻弄されて生息状況が大きく変わってしまった生物をとりあげますが、減ったものだけでなく増えたものがいる点も重要なポイントです。5章(ⅴ)では、少し視点を変えて標本とリビングコレクションが互いに補い合って生物多様性保全に貢献している事例を見ていきます。最後の6章(ⅵ)では標本を活用した新展開を、いくつかの成功事例で紹介します。
本書が、「博物館の展示室にずっと陳列されているもの」あるいは「収蔵庫で埃をかぶっているもの」といった標本に対する印象を払拭するきっかけになることを願っています。
〈監修・執筆者〉
◎海老原 淳
国立科学博物館植物研究部陸上植物研究グループ研究主幹。専門はシダ植物の分類学。
◎遊川知久
国立科学博物館植物研究部多様性解析・保全グループ長。専門はラン科植物の多様性生物学、植物遺伝資源の保全。
◎中江雅典
国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹。専門は魚類の系統分類および形態学。
◎細矢 剛
国立科学博物館植物研究部植物研究部長。専門は菌類学。
◎吉川夏彦
国立科学博物館動物研究脊椎動物研究グループ研究員。専門は両生類の系統分類学、生物地理学。
◎神保宇嗣
国立科学博物館標本資料センター副コレクションディレクター。専門はチョウやガの仲間の分類学。
【国立科学博物館動物研究部】
井手竜也(陸生無脊椎動物研究グループ研究員)
川田伸一郎(脊椎動物研究グループ研究主幹)
田島木綿子(脊椎動物研究グループ研究主幹)
西海 功(脊椎動物研究グループ研究主幹)
長谷川和範(海生無脊椎動物研究グループ研究主幹)
【国立科学博物館植物研究部】
奥山雄大(多様性解析・保全グループ研究主幹)
田中法生(多様性解析・保全グループ研究主幹)
保坂健太郎(菌類・藻類研究グループ研究主幹)
【目次】
はじめに
科博の現生生物コレクション/環境省による絶滅のおそれのある種のカテゴリー/標本写真の見方
i. 幻となった生き物
1-001 ニホンオオカミ
1-002 ニホンカワウソ
1-004 トキ
1-005 トキウモウダニ
1-007 タカノホシクサ、
1-008 コウヨウザンカズラ
1-009 アミラッパタケ
1-010 小笠原諸島の絶滅陸貝
column 「日本固有種」とはなにか?
ⅱ. 再発見と復活
2-001 ホソバノキミズ
2-002 ムニンキヌラン
2-003 シマクモキリソウ
2-004 クニマス
2-005 カドタメクラチビゴミムシ
2-006 ハハシマアコウショウロほか
column 国内の調査不足地域はどこか?
ⅲ. 絶滅寸前種
3-001 日本から絶滅寸前の哺乳類
3-002 日本から絶滅寸前の鳥類
3-003 日本から絶滅寸前の魚類
3-004 日本から絶滅寸前の爬虫類・両生類
3-005 日本から絶滅寸前のチョウ
3-006 日本から絶滅寸前の冬虫夏草
3-007 日本から絶滅寸前のラン
column 日本の絶滅寸前種の標本収蔵状況を知る
ⅳ. ヒトと生き物
4-001 チシマラッコ
4-002 コウノトリ
4-003 アオギス
4-004 サクラソウ
4-005 ツマグロキチョウ
4-006 タシロラン
4-007 ガムシ、ミズスマシほか
column 急速に減少した都市の生物多様性
ⅴ. リビングコレクション
5-001 コシガヤホシクサ
5-002 カンアオイ類
5-003 絶滅寸前のシダ植物
column 標本にもとづい正確な分布図作成
vi. 標本の挑戦
6-001 ライチョウ
6-002 オオサンショウウオ
6-003 ツクバハコネサンショウウオ
6-004 種子がみのらなくなったラン科植物
column 標本からDNAを得る方法
おわりに
科博標本をもっと知りたい! 7つのQ&A
【著者紹介】
国立科学博物館 (コクリツカガクハクブツカン)
1877年に開館した日本でもっとも歴史のある博物館のひとつであり、自然史・科学技術史に関する国立の唯一の総合科学博物館。日本およびアジアにおける科学系博物館の中核施設として、調査・研究、標本・資料の収集・保管・活用、展示・学習支援を推進している。500万点を超える標本・資料のナショナルコレクションを保有し、上野本館(日本館、地球館)、筑波研究施設(総合研究棟、自然史標本棟)、筑波実験植物園、港区白金台の附属自然教育園で活動を展開している。
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